第210回 衆議院臨時国会


【衆本会議】鈴⽊敦議員が岸⽥総理の帰朝報告に対する質疑

インドからのウクライナ訪問、お疲れ様でした。G7⾸脳の中で最後の訪問となった、という⾒⽅もありますが、現地の最新の状況を⾒、聞きとったことは、G7サミットで実のある会議を主催する上で⾮常に有益であろうと思いますし、この時期の訪問については外交上⼤変結構であったと考えております。


ただし、総理の動向がポーランド⼊国時点から追跡可能であったことは、危機管理上極めて問題であったことは指摘しておかなければなりません。アメリカのバイデン⼤統領がウクライナを訪問した際には、ジャーナリストには携帯電話の携⾏を禁⽌し、キーウに到着するまで報道が禁じられておりました。我が国の場合、総理がお乗りになっていた⾶⾏機の映像や、プシェミシルから列⾞に乗⾞する様⼦などを報道が速報しておりました。これがカメラでなかったらどうなさるおつもりですか。 何より、これによって⽇本国内閣総理⼤⾂の安全を脅かすのみならず、先⽅のゼレンスキー⼤統領の動向をも予⾒可能としてしまったのです。武⼒紛争が⽣起している地域を訪問する際は、極めて厳格な危機管理の認識が必要です。関係各所に猛省を促すとともに、この件について実際どのように捉えておいでなのか総理に伺います。

現地でもお聞き及びとは思いますが、ロシア軍はウクライナ領内から複数の⼦どもを「再教育」と称してロシア国内に連れ去り、ロシア⼈家庭に編⼊するという深刻な⼈権侵害をおこなっております。北朝鮮による拉致問題の解決を最重要課題と位置付ける我が国が、この問題に他⼈事でいるわけにはいきません。5⽉に予定されているG7サミットでは、我が国も拉致被害当事者国であるとの認識のもと、他国による拉致という深刻な⼈権・主権侵害への対処を議題に加えていただくことを求めますが、総理のご⾒解を伺います。

岸⽥総理のウクライナ訪問と時を同じくして、ロシアのプーチン⼤統領は、ロシア訪問中の中国の習近平国家主席と会談を⾏い、共同声明では中国が主権と領⼟保全のためにとる措置をロシアが「断固⽀持する」と明記し、台湾問題についてこれまでより踏み込んだ内容となりました。プーチン⼤統領はウクライナ停戦に向けた中国の仲介案を平和的解決の基礎とすることができると賞賛しました。中国のロシアへの影響⼒が⽇を追って増しています。昨年のロシアと中国との貿易額は前年⽐約3割増えました。また、輸出決済通貨における⼈⺠元の割合は昨年1⽉の0.4%から9⽉に14%に上昇し、ロシア財務省は外為市場への介⼊を今年から⼈⺠元で実施することを決めたと報じられます。⼈⺠元経済にロシアが取り込まれ、経済のみならず、外交でも、中国へのロシアの依存度は今後も⾼まることが予想されます。 ⼀⽅の中国はロシアへの影響⼒を⾼めると同時に、エネルギーを安定的にしかも割安に確保でき、さらにはロシアの軍事技術の⼊⼿も可能になると⾒込まれます。中国によるロシアのとりこみが、世界の経済⾯、軍事⾯双⽅の⻑期的安全保障に与える影響について、総理の認識をお伺いします。

中国の影響⼒拡⼤はこれだけでなく、サウジアラビアとイランの外交関係正常化の仲介は、中東を巡る地政学にとって衝撃的な出来事と⾔わねばなりません。ドルが基軸通貨である基盤の⼀つに、原油取引決済がドル建てであることが挙げられますが、圧倒的な⽯油購買⼒を持つ中国は、中東産油国のエネルギー市場における影響⼒を⼀段と強めると同時に、湾岸諸国に対して提案している原油取引の⼈⺠元決済を実現することで、世界経済の秩序を⼀変させることができます。 中国は⼈⺠元決済の拡⼤、エネルギー取引の⼿段の独占によって⽶国との競争に勝利する意図を有していると考えられ、⽇本を含む⻄側諸国としては懸念すべき状況と考えますが、総理の認識を伺います。

⽶国はシェール⾰命によりエネルギーを⾃給できますが、⽇本にはできません。我が国は原油の90%を中東地域からの輸⼊に頼っており、国内で原油・天然ガスの⽣産ができる⽶国と全く同じエネルギー戦略を取り続けることは不可能です。我が国の今後のエネルギー戦略は、我が国による、我が国独⾃の資源外交を展開する必要があると考えます。 中東産油国との関係強化に向けた国家の総⼒を挙げた資源外交を加速度的に進めるべきではないでしょうか。また、⽶国にも中東への強いコミットを働きかけるべきと考えますが、総理に併せて伺います。

アルプス処理⽔の海洋放出をめぐっても、中国外務省軍縮局が国内外のメディアを集めた記者会⾒において「ロシアなど周辺国のほか、南太平洋諸国などとも連携して反対していく」と発⾔しました。私がかねてから外務委員会及び東⽇本⼤震災復興特別委員会において、我が国の政策に反対している国家のみならず、世界に広く理解を得る努⼒をせよと申し上げてきたのは、こういうことになるからであります。今からでも遅くはありませんから、早急に極東地域のみならず太平洋島嶼国、ヨーロッパ諸国、アフリカ諸国とも連携を深める必要があります。いわゆる⻄側の価値観のみを強調した外交ではなく、交通・公共インフラなど我が国が強みとする分野を⽣かした、安全保障も視野に⼊れた多⾯的な外交を戦略的に進めるべきと考えますが、総理のご⾒解を伺います。

ロシアによるウクライナ侵略以降、世界は法の⽀配と⺠主主義を重視する国々と、権威主義的な政治体制の国々との間の勢⼒争いの様相を深めています。いわゆるグローバルサウスと⾔われる国々が権威主義的な勢⼒に飲み込まれないよう、世界の法と⺠主主義を断固として守り抜く、強い覚悟が必要であることをお訴えし、私の質問といたします。

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